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REPORTS レポート
2021年7月12日

【連載】繊維・ファッション業界の指針となるSDGs -人権デューディリジェンスとは-(2020年5月執筆記事)

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※2020年5月18日付の繊研新聞の記事を一部変更して掲載しています
近年世界的に認識が高まり、日本でも取り組む企業が増えている「SDGs(持続可能な開発目標)」。国際的な目標は、日本企業に課せられた「責任」であると当時に新たな「機会」と捉えることもできます。SDGsが繊維・ファッション業界にもたらす影響やビジネスチャンスについて解説します。
SDGs(持続可能な開発目標)では、その前文で「誰一人取り残さないことを誓う」とうたわれており、全ての人々の人権の実現が目指されています。
SDGsを定めた文書の中で言及されている重要な国際的枠組みとして、2011年に国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」があります。人権に関して国家や企業が果たすべき責任を定めたこの原則において、企業の義務として、特に重点的に言及されているのが「人権デューデリジェンス」です。これは企業活動における人権への負の影響の可能性(人権リスク)を特定し、防止するための一連のプロセスを指します。イギリスなど法律で実施を義務付ける国も増え始めており、将来的には日本でも法整備が進む可能性があるため、企業には早急な対応が求められます。
人権デューデリジェンスの実務アプローチとしては、まずは従業員・経営層・取引先などへのヒアリングや社内規程の精読を通じて、自社事業に関連して発生する潜在的または顕在的な人権リスクの全体像を把握するのが基本です。その上で、各リスクの重要度を「深刻度」と「発生可能性」の観点から評価します。「深刻度」は仮にそのリスクが顕在化した場合に引き起こされる人権侵害の深刻さ、「発生可能性」はそのリスクが顕在化してしまう可能性を指します。双方が高いことが判明したリスクは、最優先で対処すべき対象となります。
チェックすべき主な人権リスクには、ハラスメント(パワハラ・セクハラなど)・差別・強制的な労働・児童労働・賃金の不足及び不払い・過剰な労働時間・労働安全衛生の不備などがあります。
繊維・アパレル業界では強制労働や児童労働の問題が注目されがちですが、広告や商品における「差別的な表現」のリスクにも注意が必要です。欧州に本部を置くファストファッション大手は、「ジャングルで最もクールな猿」とプリントされた衣服の広告に黒人少年を起用したことで、「人種差別的」と激しく非難されました。また近年では、特定の商品や広告に対して「文化の盗用」と批判が寄せられる例があります。文化の盗用とは、人種・民族などの特定の集団のアイデンティティーを支える文化的意匠を、その集団以外の人々が流用することを指す概念です。こういったリスクへの対応が十分か、商品・広告デザインのプロセスを精査するのもデューデリジェンスの一環です。
新型コロナウイルスの流行が深刻な影響をもたらす中、人命や人権を守る適切な対応ができているか、企業に向けられる目線は厳しくなっています。人権デューデリジェンスを通じて、自社の抱えるリスクと向き合うことが求められます。

繊研新聞(2020年5月18日付)

繊研プラス:https://senken.co.jp

株式会社オウルズコンサルティンググループ
プリンシパル
矢守 亜夕美

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