※2020年1月27日付の繊研新聞の記事を一部変更して掲載しています。
近年世界的に認識が高まり、日本でも取り組む企業が増えている「SDGs(持続可能な開発目標)」。国際的な目標は、日本企業に課せられた「責任」であると当時に新たな「機会」と捉えることもできます。
SDGsが繊維・ファッション業界にもたらす影響やビジネスチャンスについて解説します。
SDGsが繊維・ファッション業界にもたらす影響やビジネスチャンスについて解説します。
残り10年――。国連が2015年に定めた「持続可能な開発目標」(SDGs)は17のゴールとその実現のための169のターゲットから構成される2030年までの国際目標です。「目標1:貧困をなくそう」「目標2:飢餓をゼロに」「目標3:すべての人に健康と福祉を」のような国家レベルの目標だけでなく、「目標12:つくる責任・つかう責任」「目標14:海の豊かさを守ろう」などの消費者が参画すべきものも含まれています。
「地球上の誰一人として取り残さない」ことを誓うSDGsは、2001年に策定された国連「ミレニアム開発目標」(MDGs)と二つの点が異なります。対象となる課題が発展途上国のみならず先進国自身も含めた広範なものであること。そして、企業が協力者ではなく主要な「行動主体」とされていることです。
2020年からちょうど10年で、企業がこれら17のゴールにどう貢献できるかが問われています。
2020年からちょうど10年で、企業がこれら17のゴールにどう貢献できるかが問われています。
日本でも企業の意識は徐々に変わってきました。最初の気づきは「CSR」(企業の社会的責任)との違いです。CSRはあくまでも「責任」。返礼や利益還元は期待せず、他社との比較も不要です。ところが投資家が「ESG」(環境・社会・ガバナンス)を考慮する傾向が高まるにつれ、より積極的に社会貢献している企業が選別されるようになりました。SDGsはこの指標となっているのです。
そこで企業は数年前から投資家向け資料の中で、自社の製品やサービスの紹介にSDGsのロゴを貼ってアピールを始めましたが――正直のところ、それだけでは何も変わりませんでした。企業は今、次にどうすべきかを模索しています。
経営者の意識から変わる必要があるでしょう。SDGsは日本企業のチャンスそのものです。国際経済の絶対的な尺度だったGDP(国内総生産)で日本の順位は下落の一途。2018年の1人当りGDPは世界26位です。IMDが作成する「国際競争力」では30位。どちらもかつての日本は1位や2位でした。
一方、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)などが発表した2019年のSDGs達成度ランキングで日本は15位。欧州各国に比べ「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」などに課題があると指摘されていますが、それでも旧来のモノサシであるGDPなどに比べれば、SDGs達成度では上位なのです。
ビジネスの現場では新興国企業とのコスト競争が年々熾烈しれつになり、もはや品質の面でも優位性を保つことが困難な事業環境です。旧来のモノサシだけでなくSDGsが顧客や社会から選ばれる基準になることは、またとない逆転の機会です。当連載でヒントを見つけてください。
繊研新聞(2020年1月27日付)
株式会社オウルズコンサルティンググループ
代表取締役CEO
羽生田 慶介
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羽生田 慶介